「終わりからはじまる」内面は成長し続けるという、ブリッジズの理論。

はじまりは、終わりから。

初回を言葉遊びのよううにはじめましたが、これがブリッジズを今回選んだ理由です。

「人生の転機は終わりからはじまる」って、興味深い考え方だと思いませんか?

この考え方を知ることで、どんな状況にあっても「今の状況は停滞ではないんだ」と、希望を見つけることができると私は考えています。

では、どのような考え方なのか、みなさんの人生を思い浮かべながら、ここから一緒に少し旅をしてみましょう。

このブログカテゴリでは、やみくもに頑張っているけどなにかつらい。キャリアのヒントがほしいという方に向け、キャリア理論家のメッセージから考えてみるきっかけをお伝えしていきます。

🌿ブリッジズの「終わりから始まるトランジションの理論」とは?

ウィリアム・ブリッジズ(William Bridges, 1933-2013)は、人生の転機(トランジション)への対処方法を、成人の発達の観点から検討しました。つまり、身体の成長が一段落しても、心は転機によって成長していくということです。

キャリアや人生の転機に直面したとき、私たちはただ「外側の変化(転職・引越しなど)」に反応しているだけではありません。実は、「内面的な変化(気持ちや意味づけ)」が大きく影響しています。

ブリッジズはこうした内面の変化プロセスを「トランジション」と呼び、「終わり」「ニュートラル・ゾーン」「始まり」の3つの段階に分けて説明しました。

1.終わり(Ending):何かが終わるとき。喪失や混乱、不安を感じやすい時期。

2.ニュートラル・ゾーン(Neutral Zone):古いものを手放し、新しいものがまだ見えない
  「宙ぶらりん」の時期。不安定だけど、自己再構築のチャンスでもある。

3.始まり(New Beginning):新しい方向性や価値観が芽生え、前向きに動き出す時期。

この理論では、「変化そのもの」よりも、「それをどう受け止め、意味づけるか」が大切だとされています。

🌿「終わり」とは何か?変化との違い。私の事例から。

具体的な話をしましょう。私が前職を辞めたときのことです。

夫の仕事の都合で地方へ移住することとなり、退職することになりました。
仕方のないことと納得して前向きに取り組み、転居後には気持ちもあっさりと切り替えたつもりでした。

この出来事は、ブリッジズの言う「変化」です。でも変化とトランジションは違うのです。

私は実際にはなかなか気持ちを切り替えることができておらず、しかもそのことに自分自身で気がついていない状態でした。

退職・引っ越しは変化なのですが、内面的な変化が追いついていなかったのです。

都会での暮らしや、今までの仕事を失う喪失感が、本当はあったのでしょう。
でもそれを見て見ない振りをして、「大丈夫、大丈夫」と無理やり前向きに捉えようとした訳です。現状を受け入れがたかったために否定していたのですね。

「手放すものが何かを考えるのが大切」とブリッジズは言っています。

私は、少し歩くだけでたくさん美しいものや楽しいものがある刺激的な都会の生活が好きでした。
仕事にはやりがいを感じており、そこでの役割や責任も大切にしていました。

それを認め、前の生活を終わらせる、手放すという決心がないまま、どこかに空虚な気持ちを抱えたまま数年が経っていました。生活や仕事は新しくはじまっているのに、です。

なんとなくこの場所が合わないなぁと思っていましたが、前のままの自分でいたかったために「合わせたくなかった」のですね。やっとこうやってはっきり認められるようになった今、トランジションで言う心理的な「終わり」は訪れているのだなと思います。

これはなにも、退職や引っ越しだけではありません。

みなさんも今までに何らかのトランジションを必ず経験しているはずです。

結婚、離婚、出産、昇進、異動、病気、死別・・・たくさんのトランジション。

その出来事の大小ではなく、その方の人生のある時期に重なると、それが大きな意味を持つことがよくあります。また、外側の変化が起きなくても、内面的なトランジションは起きます。35歳以降の方で特に、ご経験があるかもしれません。

あなたにとっては、どのようなことでしょうか。是非、思い浮かべてみてくださいね。
どんな自分を手放してきたでしょうか?

🌿ニュートラル・ゾーンって?

では、終わりに続いて起きる「ニュートラル・ゾーン」とはどんなものでしょうか?

これは、自己変容のために大切な、本質的な段階です。
自分を再方向付けていき、自分を再定義していきます。今後に向けての新しい意識や、自分らしさを取り戻すプロセスと言えます。

ですので、内面的にぐるぐるしてしまう期間になることが多いと思います。居心地の悪さを正面で受け止めるというには、とてもエネルギーがいるし、勇気がいることです。

つい焦ってしまうけれど、この時間が必要であり大切であると理解して臨むことが大切ですね。何を大切にし、どうしていきたいかしっかり考える、とても大切な時間です。

考え込むだけではなく、試行錯誤の行動をたくさんしていって、自分の価値観や方向性を明確にしていくプロセスでもあります。

ニュートラル・ゾーンが嫌で、早く抜け出そうとしてしまうことも多いですが、それは放棄したいだけではないのかということを考えることが大事です。

例えば、就職の相談を受けていると、早く就職したい・転職したいと考えている方がほとんどです。その場所にいるのがつらいから、今すぐ別の場所へ行きたい。その気持ちはとてもよく分かります。

でもお話をしていく中で、もともとやりたかったことに気づき、この機会にと勉強することを決めたり、自分が何を大切にしているのかがはっきりしてきて意外な方向性が見えてくる方も多くいらっしゃいます。

そんなとき、このもどかしい時期に自分と向き合う強さをもち、自己成長する力を感じ、素晴らしいなと感動します。

このように、ニュートラル・ゾーンを経て真の「はじまり」は内面的に起こります。いつ起きるかは人により、曖昧ではっきりしていないことが多いと言われています。

🌿トランジションのプロセスを大切に

みなさんは、今どんなトランジションにいますか?

変化のさなかで受け入れられない状況?
ニュートラル・ゾーンにいて、思うように進まない感覚で困っている?
それとも、じわじわとなにか変わる感覚に心が動いているのでしょうか?

どんな場所にあっても、自分の在りかたに気づいたことが素晴らしいと思います。ブリッジズは、このようなプロセスがあると知ることで各段階への臨み方が変わることも述べています。
みなさんはこれでトランジションのプロセスを知りましたから、より有意義に各段階を過ごせるということです。

内面の成長はいくつになっても起きるという、希望に満ちたメッセージ。
ブリッジズの力を借りて、みなさんにお伝えできていたら嬉しいです。

一緒に、自分の本質を突き詰めていくような成長をしていきましょう。

ここまでお読みいただき、どうもありがとうございました。

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